農家としての想い
なぜ農薬を減らすことが難しいと言われるリンゴを減農薬しようと思ったのか?
なぜ自然農法で野菜や苗を育てているのか?
なぜ家庭菜園教室をするのか?
それは、幼少期の原体験が始まりでした。
ストーリー
生まれも育ちも長野県安曇野市。
父の強い影響で昆虫が生活の中にいることが日常だった私にとって農業は「とても嫌いな存在」でした。
毎年楽しみにしていた蛍は田んぼからいなくなり、カブトムシのいる木は減り、珍しい生き物は平地ではほとんど見ることが出来なくなりました。
その理由は、
「農薬」
虫を殺す道具を扱う「農家」という職業になろうなどとは子供のころは全く思いもしませんでした。
ところが、私も20歳を過ぎたころ、自分の進路を深く考える中で、地元のメイン産業である「農業」の中に生き物の住処がないことがあまりにも「寂しく」思えたのです。
「昆虫の住処がある農園が一つくらいあってもいいじゃないか」
そう思えてから私の農家への人生が始まりました。
生き物と共存する農法を探しているとすぐに「自然農法」という言葉に行き着きました。
自然農法は「持ち込まず」「持ち出さず」「持ち込ませず」「虫や草を敵としない」という理念の元、それを実践するすべての農法の総称をいいます。
ゆえに、いろんな方法を実践されている方達がいらっしゃってその手法は千差万別。
そのいろんな自然農法の中で「自然農」というものを知りました。
「自然農」とは川口由一さんが提唱する自然と農と人の在り方(又は人としての生き方)を作物育成に転化したものだそうです(私の個人的な解釈です。誤っていたらすいません)
川口さんの言葉の中に「農法」の「法」は誰がやってもうまくいくいわば「手段」であり、「法」がつくことで「人は意識的に作物を支配的な立場にしてしまう」、だから「法」を取り去り「自然農」と名付け自然と農と人が対等な立場となることに重きを置いているのだそうです。
このことを初めて知ったとき心から感銘を受けたことを今でも覚えています。
「自然と農と人の共存」
果樹園なすのさんちは「自然農法」をベースとした土作り・環境づくりをし自然と農と人が繋がる環境を目指しています。
自然農法との出会い
~果樹園なすのさんちのビジョン~
減農薬リンゴの実践
作物の中でもっとも農薬をなくすのが難しいのが「果樹」です。
特に「桃」「梨」「プルーン」そして「リンゴ」は病害虫に非常に弱い「バラ科」の仲間で、農薬が必須な作目です。
むやみやたらに農薬を減らしただけではすぐに病害虫に甚大な被害を受けてしまいます。
ですが、面白いことに野菜は比較的無農薬がやりやすく、その理由を5年かけて探した結果、「健康な土」であれば病害虫の捕食対象になりにくいということが分かってきました。
無農薬にはまだまだ道半ばですが、今我が家のリンゴ栽培は「約50%減農薬」「無ネオニコチノイド」「無有機リン」「無除草剤」「無化学肥料」を実現できています。
これはひとえに野菜で「自然農法」を実践し土作りや管理などの情報がフィードバックされているからです。
特に殺虫剤は標準の消毒よりかなり削減しているため、我が家の農園には多くの生き物が戻ってくるようになり、彼らが生態系を育み一層減農薬への可能性を高めてくれます。